電子黒板は一体なんなのか?

 黒板を電子化したのが電子黒板という事ですが、本当でしょうか?黒板の機能を無理して電子化するとすごく高価な物になってしまいます。教室にある黒板の幅で8Kディスプレイを並べると1部屋数百万円かかってしまいます。低価格化してきたプロジェクターを使ったとしても、黒板の機能を実現させるためには50万円ほどは必要になるのでは無いでしょうか。

 現在発売されている電子黒板は数十万円程度で40〜50インチ程度のディスプレイにタッチペン機能が付いている物が多いのですが、後ろの席の児童・生徒から見えているんでしょうか?将来は大丈夫かもしれませんが、そんな小さな黒板を狭い教室に入れるととても邪魔になってしまいます。業界が潤うのは大歓迎ですが、これでは並んだ席の順番で不平等になってしまいます。

 5年ほど前に私は普通教室の天井にプロジェクターとAppleTVをセットで吊す事を思い立ちました。ホームセンターで買ってきた合板の板に穴を開け、天井板を吊るしている軽量鉄骨にぶら下げる方法です。昼間でも後ろから見える明るさで100インチ程度の大きさで映写できるプロジェクターは既に5万円を下回っていて、年次予算で導入する事が可能になったからです。幸い、その普通教室の黒板はホワイトボードになっていて、天井に吊り下げたプロジェクターからホワイトボードに直接写す事ができました。

 効果抜群です!!iPadを使っていた生徒たちは自分の画面をいつでもプロジェクターを使って写すことができ、自分がまとめた意見や、自分の作った作品は自分の席に居ながらにしてできます。もちろん前に立って発表することもできます。

 このような授業を始めて生徒も教師も慣れてきた頃に地域の先生方に開放授業をしてみたところ、大勢の先生方と教育委員会の事務局の先生方がご見学になり、とても熱心にご覧になって見えました。ICTに詳しい先生は、生徒や教員が自由に画面を表示しながらそれを使って説明したり発表する様子がどんな仕組みで実現しているのかを調べているようでしたが、iPadとAppleTVの標準機能しか使わず、電子黒板の機能は全く必要ありませんでした。

 資料や宿題はiPadで配布し、生徒たちは授業で課題解決に取り組んだり、課題解決を探りながら発表資料を作ったり、グループでディスカッションします。それまで個別にノートで行っていた考えをまとめる作業や模造紙と太いペンを使って発表資料を作るような事がいつでも出来る様になっていました。

 ある教育委員会の先生が「これ、この前入れたある小学校の電子黒板よりずっといい仕組みだけど幾らかかったの?」と聞かれ、「7万円です」と答えたら、絶苦しておられました。その小学校では当時100万円ほどの価格の60インチの電子黒板を各教室に入れたそうです。その100万円があれば、エアコンを入れたり、黒板をホワイトボードに張り替えて教室の壁紙を新品に張り替える事も出来たのです。

 いまだに学校に児童・生徒一人1タブレットを導入出来ていない学校は日本にどのくらいあるのか?本年度の補正予算では政府が大胆な予算化に踏み切ったようですが、ここでも電子黒板という言葉が地方自治体で浮き沈みしているように伺います。

 今の電子黒板は「ダメ・絶対」と私は言います。なぜなら、黒板をホワイトボードに変更して、安く買い替え出来るようになったプロジェクターを天井から吊るして、AppleTVを置いた方がずっと大画面になって、生徒たちが共有出来る「黒板の機能拡張」ができるからです。

 今使っているノートを置き換えるためのタブレットではなく、今使っているノートや教科書、学習プリントを拡張するのがタブレットです。今使っている黒板を電子黒板に置き換えるのではなくて、今ある黒板を拡張するのがプロジェクタとAppleTVなのです。

 本当の意味でそれがわかるのは、教師も生徒も使えるようになってからというのがとても悲しい真実ですが、先生方には是非!普通教室をホワイトボードにしてプロジェクターを吊り下げて、AppleTVで生徒たちのiPadと黒板をシェアしてみてください。今まで出来なかった拡張された授業が待っています。

 では、電子黒板とは一体何なのでしょうか?いまだに導入している学校があると聞いていますが、30年ほど前に社会科や暮らしの授業で廊下から先生がブラウン管テレビとワゴンを引きずってきて、たまにうまく動いてくれないVHSビデオを一生懸命巻き戻したり早送りをしていた物が少し大きめの液晶テレビに置き換わっているくらいに考えた方が良いと思います。

 小学生のとき、先生がとてもきれいな字で、限られた面積の黒板をうまく区切りながら板書してくれるのを見て、ノートをきれいに整理できないか試行錯誤していた事がありました。横長の黒板から見開きB5のノートへの情報の整理、そんな素敵な試行錯誤が黒板から出発していた事を思いつつ、今の黒板のフルサイズに100インチ8K以上の解像度でタッチパネルディスプレイにならなければ本当の電子黒板とは呼べない事を断言します。

 そんな製品が全ての教室に整備されるにはまだまだ数十年先になるのではないでしょうか。それまでは、電子黒板と称するタッチパネルディスプレイは、大型タッチパネルディスプレイと呼ばれる方がずっと正しいと思いませんか?