GIGAに思う事

2020.2.26 最近、全国各所にて政府が進めているGIGA(Global and Innovation Gateway for ALL)スクール構想の説明会が頻繁に開かれ、Windows、ChromeOS、iPadOSの3種類のデバイス調達の動きが活発化しています。国の補助事業は教室のWi-Fi環境の拡充も含めて、かなり大胆な補助施策が展開される事になり、とてもワクワクする展開となっております。

 児童・生徒1人1台のデバイス整備を達成している学校が10年ほど前から既に登場しているのに、未だに多くの自治体が学校教育のICT化に立ち遅れている状況となっているのが事実です。これを期に、児童・生徒たちのために少しでも多くの自治体がICT教育に本腰を入れて新しい時代に立ち向かっていただけることを期待しております。目指せ!全員情報端末です。

 私自身の過去の経験から、ハードウェア整備に関して言えば、授業で一番使いやすいのは今のところiPad一択で、それ以外を推す人は???です。また、台数規模を考えれば学校の先生方に負担をかけない為にも、MDMの導入が不可欠である事は言うまでもありません。また、製品の補償プログラムやサポートプログラムもありますので、そちらも是非お薦めします。

デバイスは必ず壊れます。必ず修理が必要になります。使えない場面も発生します。

 次に、ソフトウェア面で、こちらがデバイス選択よりも重要です。先生方はどのように授業に活用したら良いのか、最も適しているのかを必死に考えます。そんな悩みを共有し、先生方が一緒に授業を改善できる仕組みをハードウェアの整備と両輪で各自治体で用意する必要があります。優れた教材アプリで解決できる事はごく限られた指導場面です。例えば、先生方たちが集まってワークショップを開く会場借用と旅費、それをサポートする講師への謝金、時間を確保する為の非常勤講師の増員などの予算化が重要です。それによって生み出される教育効果は絶大だと断言します。今までの教育研究の枠組みに付加しても大丈夫だと思いますが、ここはICTに向けた対応で予算化する事をお薦めします。

 さて、政府が実施している「GIGAスクール構想」は予算が取れた現時点で大成功です。これで日本も他の先進国レベルの教育環境に追いつけるような気がします。実績は児童・生徒の数と、学習用コンピュータ数の比で示されます。一方で教育現場において、「GIGAスクール構想」は受け入れ難いネーミングになっています。多様な価値観をもつ児童・生徒が集まって知識や経験を共有しながら互いに成長する安全で安心できる場所としての「学校」が、はたしてイノベーションへのゲートウェイである必要があるのか?と言う疑問を先生方が思ってしまうからです。将来、各分野でイノベーションを起こす児童・生徒は、教室のネット環境の有無にかかわらず存在していて、今も優れた才能を磨いてくれています。イノベーションと聞くと常に新しさを求めていなければならない世界観がイメージされ、どうもマッチしません。

 また、学校のイノベーションとは何なのでしょうか?「伝統を重んじて・・・」、「去年こうだったから・・・」、「今年はもう予定あるので来年からに・・・」というような言葉を現場で何度も聞かされてきた私には、少なくとも公立学校が教育のイノベーションを起こすイメージが全く湧きません。先生方は公職であり、先生方にとって失敗する可能性をできる限り排除する事が重要である為、失敗の可能性がある新しい事にはとても慎重にならざるを得ません。

 GIGAに込められた、全ての児童・生徒にとってグローバルとイノベーションのゲートウェイの役割を持つ学校の構想は、今の学校にとって高すぎるハードルに思えます。この事業を実施される自治体、学校は、これから数多くの難題を乗り越える為に本当に頑張られると思います。微力ながら是非お手伝いさせていただければと思います。

 政府では、このような難しい造語を作らないと教室のWi-Fi環境とデバイス整備の予算化が難しいのでしょうか?少しだけ嘆かわしい気がしてしまいます。