アンプラグドコンピューティングはプログラミング教育ではない。

 数年前の話です。ほんのわずかな時間でしたが、先生方とICT教育についてディスカッションする機会がありました。公立の中学校の先生から「パソコンやタブレットが自分の学校に導入されていないが、プログラミング教育をどのように進めれば良いのか?」という質問に、何人かの先生からは、「アンプラグドでやってみては?」という提案がありました。パネリストだった私は、「かなり以前から地方交付税措置されているのだから、無いなら買えば良い」というお答えをして、とても会場が和んだ覚えがあります。
 さて、GIGAスクール構想で十分な数のコンピュータを買い揃える事ができた多くの小中高において、プログラミング教育は進んでいるのでしょうか?
 あの時、「学校に入っていないからどの様に進めれば良いのか?」と質問した先生は実践しているだろうと思いますが、読んでいるみなさんはどう思いますか?

 ここで登場した「アンプラグド」と言うキーワードですが、これはプログラミング教育とは別物と捉えなければなりません。「アンプラグドコンピューティング」はコンピュータの構造的な理解をわかりやすくする為に考えられた教育手法なのですが、プログラミング教育が目指すものはコンピュータの構造理解ではないし、学習過程が決定的に異なっているからです。(だって、人間がコンピュータの真似なんてできるわけがない)
 ご承知の様に、アンプラグドコンピューティングは、「コンピュータごっこ」というお遊戯です。残念なほど時間を使って論理的思考力もあまり育ちません。
 既にコンピュータが導入済の学校は、プログラミング教育に邁進すべきであり、そのための教材開発に時間を費やすべきだと考えます。

 あの時の不毛な議論は、今や「どうすればプログラミング能力(論理的思考力や判断力、分析的に問題解決できる力)をより効果的・効率的に高められるのか」というテーマに置き換わっています。先生方の準備は万全でしょうか?

【重要】プログラミング教育は必履修になりました。→日本においては高校を卒業するまでのカリキュラムで全ての児童・生徒がプログラミングを経験する事が義務化されたと解釈できます。つまり今後の日本にあっては、プログラミング能力は全国民の常識的スキルになっていくと言う事です。

 学校でできるプログラミング教育について、実社会はそれほど高度な事を求めているわけではありません。それよりも基礎・基本をしっかりと身につけてほしいと願っています。「プログラミング能力の基礎・基本とは何か」を先生方が追求して教育実践に生かしていく事こそが今求められていると思います。